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TBSモニタリングです

駅のホームに、終電を待つひと組の若いカップルがいた。
ベンチに座り、たわいのない会話をしながら電車を待っている。
「ねえ、ずっと気になってたんだけど……あの人ちょっと変じゃない?」
彼女が指差す先には赤い傘を差したワンピースの女性。
髪が長く表情はよく見えないが、何だか暗そうな女性だ。確かに少し変わっている。
「ほんとだ。なんかオバケみたい」と茶化しながら話していると
ガタンガタンと音が聞こえ、電車が到着する。
「あ、やっと来たね〜!」
彼女が嬉しそうな顔で乗り込む。車内はガラガラで自分たち以外に乗客はいないようだった。
「あれ?そういえばさっきの女の人どこいったの?」
先ほどまで近くに立っていたはずだが、女性の姿はどこにも見当たらない。
「終電だし、乗れなかったら可哀想だよねえ…一応駅員さんに伝えよっか。」
車掌に声をかける。
「赤い傘の女性…ですか?どこにもいませんけど。
見間違いじゃないですか?」

いや、確かにいたはずだ。
辺りを見回したが、女の姿はどこにも見当たらなかった。
まあいなくなってしまったものはどうしようもない。
大人しく座って電車の出発を待つ。
「なんか変だね」
と、妻と話していると、突然電車の電気が急に消え、車内は真っ暗になった。
「申し訳ありません、電気系統でトラブルが発生しているみたいです。
電車から降りて少々お待ちください。」
車内アナウンスが流れ、仕方なく電車を降りる。
駅のホームでふと横を見ると、いる。さっきと同じ赤い傘を差した白いワンピースの女性だ。
鼓動が早くなる。
なんとなく嫌な雰囲気を感じ、車掌に話しかける。
「あの、さっき言った女性なんですけど、まだいるみたいで」
「赤い傘の女性…ですか。
実は目撃情報は何件かありましてですね。
その……、あまり気になさらない方がよろしいかと。」
歯切れの悪い返答に
「どういうことですか?」と強い口調で問い詰める。
「えっとですね、実は四年ほど前からその女性の目撃情報はありましてですね。
……その…皆さん、消えてるんですよ。」
「え?」
その女を目撃した人たちは皆、まるで神隠しにでもあったかのように忽然と姿を消してしまったのだという。意味がわからなかった。
そんなバカなことがあるか。
……もし本当なら次は俺たちが、消えるのか?
あの得体の知れない女に、消されるのか?
妻の手が小さく震えているのがわかった。
「大丈夫だよ、一刻も早く家に帰ろう。
そんなバカなことがあるもんか。絶対大丈夫だよ」
励ますようにそう言った。

「トラブルは直りましたんで、もう乗ってもらって結構ですよ」
そう車掌に言われ、もう一度電車に乗り込む。
それと同時に隣の車両からカメラを構えた男性が勢いよく飛び出してきた。大勢のスタッフもそれに続く。

「TBSのモニタリングです」

2人は一瞬ポカンとした後、思わず笑い出してしまった。
「めちゃくちゃビビった〜!」
「怖かった〜!ほんと泣いちゃうかと思った…」
ホッとした。ドッキリ番組だったのだ。あの赤い傘の女、幽霊なんかじゃない。番組のスタッフだったのか。
安堵しながらスタッフのインタビューに答える。
「驚きましたか?」
「そりゃあもう。本当に怖かったですよ!車掌さんも仕掛け人だった?ですか?」
「いや、彼は『本物』ですよ」
「え〜、本物の車掌さんだったんだ」
本物の車掌に演技をさせていたなんて
凝った演出だ。彼女はまだ理解が追いついていないようでパニックになっている。
「待って待って、いつからドッキリだったの?」
「そうですね…四年前ですかね。」
え、四年前?
不可解な返答にキョトンとする2人。
そこにさっきの車掌が現れる。
「あ、車掌さん!もうびっくりしましたよ。ドッキリだったんですね」
「はい?ドッキリ?」
キョトンとした顔で車掌は続ける。
「ご存知だったんですか?
四年前にこの車両がドッキリ番組で使われる予定だったこと。
ロケバスがトラックと正面衝突したとかでスタッフの皆さんが亡くなられてね。とても不運な事故でした。
なんでも若い女性をターゲットにした心霊系のドッキリをやる予定だったそうで。
皆さん本当に人を驚かすのが好きでね。
なかなか撮影が終わらないから大変だなんて愚痴ってましたよ。
結構お蔵入りが多いんですって。
いいリアクションが撮れるまで何度も撮り直しをするらしいですよ。
ターゲットを変えて、何度も。」

気が付くとスタッフはもう誰もいなくなっていた。