生活エッセイ

人見知りなのにアパレルでバイトしてた

大学生の時、派遣会社に登録してバイトしてたんだけど、
その派遣会社が、わたしにアパレルの仕事を紹介してきた。

「わたしにアパレルなんて向いてるわけないじゃんクソ人見知りなのに」

と思いながらも派遣会社のスタッフにも人見知りをしていてまともにまっすぐ目を見ることすらできなかったので、

モゴモゴしている間に決まってしまった。

ギャルの水着ショップの店員に!

面接で落としてくれよ〜頼むぞ〜

あれよあれよと面接に連れていかれ、金髪ギャルのお姉さんと昔ぶいぶい言わせてました系の太ったおばさんに面接を受けることになってしまった。
なんか先週まではちゃんとかわいいギャルの子が働いてたけど、
「なんかダリィっす」って辞めちゃったんだって。
その穴埋めが急遽ほしいと。
太ったおばさんはちょっと訝しげな顔をして
「もし他にギャルの子がいたらそっちがいいんですけど、この子しかいないならこの子でいいです」と言った。
わたしの登録していた派遣会社は女性のスタッフがわたし1人しか在籍していなかったため、採用が決まってしまった。

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できるだけギャルい格好で

店長から言われたことは1つ。
できるだけ、ギャルい格好できてほしいということ。
ぎゃ…ギャルい格好…。
先方の言いたいことはわかる。
夏に胸を躍らせた若い女子が集うこの水着ショップに、
ちびまる子ちゃんの野口さんをもう少し根暗にしたような漆黒のオーラを纏った女が店内に突っ立ってたらそりゃ浮くよ。
イケイケの水着ギャルに海に沈められて殺された陰気な女の霊だと思われても仕方ない。

ギャルい服、ギャルい服…。
持ってねえ。持ってる訳ねえ。
頭を抱えてローリーズファームに行ったけど、ハイビ柄の服なんて一着も売ってなくて
悩んだ末に家にある一番丈の短いデニムスカートにレギンスを重ねて履いていった。
即座に脱がされた。
ギャルは生足に限るっしょ!と言われたけどギャルじゃねえもん。
上の服無印良品だもん。

人見知りのクソ接客

そうしてバイト初日!
恥ずかしくってモジモジしてたら怒られてしまった。

いや恥ずかしいだろ。
知らない人に話しかけるの恥ずかしいだろ。

「もっと友達みたいなノリでガンガン話しかけちゃって!
うちらがサポートするからさっ!」
と言ってくれたのはありがたかったけど、

普段から友達に自分から話しかけたりしない

お客さんが来店するとそそくさと棚の影に隠れたり、そっぽ向いて「らっしゃいらっしゃい!」というのが関の山。
だって恥ずかしいんだもん!

安室奈美恵地獄

その水着ショップでは、ラジカセでギャルの喜ぶイケてるミュージックが掛けられていたんだけど、実にその95%が安室奈美恵!
仕方ないね、ギャルは安室ちゃんが大好きだから。
朝から安室、昼間も安室、夜まで延々と安室。

まさに安室地獄。

ノイローゼになりそうだった。
もちろん安室奈美恵は何も悪くない。

おかげで
「キャンユーセレブレート」しか知らなかったわたしが、
たった2週間でほとんどの曲を歌えるようになってしまった。

一度だけ「何が聴きたい?」って聴かれてCDの束を見せられたけど、
安室奈美恵と倖田來未しかなかったから息も絶え絶えで「安室奈美恵」って言ったよ。

山下達郎をかけてくれ〜!!!

しこたま叱られる

せっかく雇ったわたしがクソの役にも立たないので、ギャルの店員はブチギレ。

ちゃんと話しかけてね!?
次に来たお客さんの接客は任せるからね!
と怖い顔で怒るので、

来ないで…来ないで…
一生誰も来ないで…

と必死に神に祈ったものの、

ふつうに可愛い水着がたくさん置いてある水着屋に客が来ねえ訳ねえし、

さすがにもうちょっと頑張ってみよ!金もらってんだし人見知りとか言ってる場合じゃないよ!クズだよクズ!恥ずかしい〜キャー!じゃねんだよ。バカ!ゴミ!役立たず!
と自分を叱責し、
話しかける!話しかける!話しかけるぞ〜!こっちの棚まで歩いてきたらすぐ話しかける!よし、話しかけるぞ!あの水着を手に取った瞬間話しかける!話しかけるぞ〜!よし、水着を身体に当てたら話しかけよう!鏡こちらにありますって話しかけよう!あっ水着置いちゃった!置いたら話しかけらんないな!うーん、次の人に話しかけよう!次誰か来たら話しかけ、あ、来た…えっと、えっと…

やっぱ恥ずかしい!!!

結局お客さんの後ろをずっとニコニコしながら付いて回って、たまに目があったら苦笑いをしたり、
「キャッ!…いつから後ろにいたんですか!?」と驚かせてしまって苦笑いをしたり、
逆にお客さんの方から話しかけられてしまって苦笑いをしたり。

ほんと何の役にも立たないデクの坊だよわたしは!!!

客に売れないならせめてお前が買えと言わんばかりに
わたしにもギャル水着を勧められたけど

友人と海に行ったことなんて一度もないし、きっとこれからもないので

と断ったら

えっ!?
じゃあ夏は何してんの!?

って驚かれてしまったんですけど、ほんと何してんでしょうね。
夏っていうか、もうずっと何してんでしょうね、わたし。