育児

産婦人科で出会った親子の話

これは、私が先日妊婦健診で、産婦人科に行った時の話。

待合の椅子に座っていると、ちょうど2歳くらいの男の子がぎゃあぎゃあと叫びながら椅子の上に乗ったり飛び降りたりを繰り返していて、
お腹の大きなお母さんが必死でそれを止めようとしていた。
大変そうだな〜と半ば他人事で見ていたけど、周りの人たちも「明日は我が身…」と言わんばかりの顔で神妙に見つめる男児持ちのお母さんや、「わかる、超わかる」みたいな顔した方が多くてフフッとなってしまった。
だけど、だんだんお母さんも疲れてきたんだろう、明らかに扱いが雑になってきていた。
子供がチョロチョロするたびに大きな声で怒鳴ったり、お尻をビシバシ叩いたり。まあ椅子で遊ぶのは危ないから注意すべきだと思うけど、そんなに怒らなくても…、と少し引いてしまった。

「なんで大人しく座ってられないの!」
そりゃ無理だよ。2時間くらい待つんだよ。2歳の子供が大人しく座ってられる時間じゃない。
子供が少し動こうもんなら鬼のような顔で頭やお尻をバンバン叩くその姿を見て、正直かなり嫌な気持ちになった。
やだなあ…。

だけど、一人のお母さんがその親子に声をかけているのを見て、本当に反省した。
「大変ですよね。」
たった一言、それだけだった。
その一言で凄く安心したような顔をして、少し笑って子供を抱きしめた。
「そうなんです、本当にやんちゃで…」

ああ、私、なんてバカなんだろう。
私も、このお母さんを追い詰めてた内の一人じゃないか。

イヤイヤ期の娘抱えて、つわりの終わらない吐き気にずっと一人で耐えていたこと。
大きなお腹で子供を抱き上げる重さ、苦しさ。
人前で子供が泣き出してしまって、必死にあやす時の気まずさ。
体調が悪くても、何日もまともに寝られなくても、誰にも頼れず全部自分の責任で小さな命を守り続けなきゃならないプレッシャー。

私だって分かっているはずなのに、
どうして理解しようとしなかったんだろう。
私だって思い通りにいかない育児に、毎日毎日頭を悩ませ、苦しみ、涙を流しているはずなのに。
こんなに追い詰められてる人の育児を正しいとか正しくないとか偉そうに批評して悦に浸って、何を思い上がってたんだろう。
昨日まさに寝ない娘に怒鳴ったばかりの癖に。連れてくの大変だからって実家に娘預けて病院来てる癖に。
そんなことにも気が付かない私は実に愚かで浅はかで、酷く薄情だ。

育児は過酷で、そして孤独だ。

多くの場合、夫は良き理解者になってはくれないし、世間なんてもっとそうだ。
そんな時、私はどうしてほしいだろうか。
どうしようもなく追い詰められて、自分の抱える絶望を、世界で一番愛しく大好きなはずの我が子に向けざるを得なくなった時、どうしてほしいだろうか。
たった一年と少し前、止まない夜泣きに苦しめられて、娘と一緒に毎晩毎晩いつまでも泣いていた自分自身に、今の私は何ができるだろうか。

今の私には正しいと思える答えは出せそうにないけど、
考え続けることで、少しでも人に優しくありたい。
せめて、自分が他人に求める程度の優しさは、見知らぬ誰かにも与え続けていきたいなと強く思った。
戒めに、ここに残しておきたい。